ボルボは2014年8月に発表を予定する新型モデル「XC90」に、ふたつの世界初となる安全技術を搭載すると発表した。
ひとつが、道路からの逸脱時に乗員を保護する「ランオフ・ロード・プロテクション」。もうひとつが、交差点で右折しようとするとき、直進する対向車との衝突を未然に防ぐ自動ブレーキ機能だ。
「ランオフ・ロード・プロテクション」とは、片側が崖になっているような道から落ちてしまったことを想定するもの。
これは、アメリカでの交通事故死の半数は道路逸脱によるもので、スウェーデンにおいても重傷もしくは死亡事故の3分の1が単独事故であることから生まれた技術だという。
具体的な対策は、車線逸脱時に乗員を守る「セーフ・ポジション機能」を開発したことだ。この機能のポイントは2つあり、ひとつは、クルマが道路を逸脱したとシステムが判断すると、運転席と助手席のシートベルトを強制的に強く巻き上げて、乗員を適切な場所に固定すること。
もうひとつは、道路から逸脱した車両は、その後、勢いよく地面に着地するのだが、そのときシートとシートフレームの間に設置したエネルギー吸収装置が、乗員にかかる縦Gを3分の1まで低減させる。これにより、道路逸脱で頻繁に発生する乗員の重大な脊椎の障害被害の危険性を低下させるのだ。
ちなみに、逸脱前の予防技術としては、「レーン・キーピング・エイド」という、ステアリングにトルクを加えて進路を修正する機能などが用意されている。
もうひとつの世界初の安全技術
もうひとつの世界初の安全技術が、右折時の対向の直進車との事故を予防する自動ブレーキだ。直進車はスピードが高いため、いわゆる「右直事故」は被害が大きくなることが多い。重大事故防止に大きく貢献する技術となることだろう。
命令されたからやるのではなく、自ら切り拓くことが尊い
世界初の安全技術を積極的に採用するボルボの姿勢には、いつも感心するばかりだ。こうした安全技術は、開発コストがかかり、車両販売価格の上昇にもつながるために、自動車メーカーはなかなか積極的に採用することができないのが事実だ。
よく「国が決めた基準に則っているので、安全性は心配ありません」というニュアンスのコメントを聞くことができるように、自動車メーカーやユーザーの間に「お上の言うとおりにやっておれば、何も問題ない」という意識が、どこかにあるのかもしれない。しかし、真の意味の安全は、お役人が決めたルールですべて担保できるはずがないだろう。
「クルマの安全への注力は、テストに合格する、あるいは安全性評価で高い点数を得ることが重要なのではありません。事故と負傷が発生する理由とその経緯を明らかにして、それを防ぐ技術を開発することが重要なのです。私たちは安全技術の開発をリードしていきます」とボルボの安全担当上級技術スペシャリストのロッタ・ヤブコソン教授は言う。
世界初の3点式シートベルトを発明し、そのパテントを惜しげもなく公開したボルボ。そして、新たな危険性を探し出し、率先して対策を実施する。人々の安全に貢献するボルボという企業の姿勢には、見習うべき点が数多くあるだろう。
*参考:Run-off Road Protection – Volvo Car Group Global Media Newsroom