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グリーンスクールにおける合理的で先進的な教育手法に未来を見る

「ジャングルの中にあり、ほぼ自給自足していて、全てが竹で作られている学校」と聞くと、多くの保護者は学業面やスポーツ・文化活動に関して不安に思うことだろう。

確かにグリーンスクールには入学試験などというものは存在しないので、さまざまな学業レベルの生徒が混在している。さらに、細かい科目毎に専門の教師がいるわけでもない。

さまざまなスポーツができるグラウンドやプール、立派な音響機器が揃った大きなホールもない。日本の学校に当たり前のようにあるものが、ここには当たり前のようにない。

しかしそれらを補って、さらに上乗せがあるくらいの教育を、この学校は”未来のリーダーたち”に提供しているのだ。

GS 教室1

■合理的な授業の進み方

海外の学校に関して日本人保護者が最も心配する科目、数学を例にとってみよう。日本の授業と違い、クラス全員で先生の話を聞き、全員で同じ問題を解くというスタイルは、ほとんど見られない。では、どうするのか?

教師は黒板にいくつかのテーマを書く。生徒たちは自分がまだ理解できていないと感じるテーマの下に、自分の名前を書いていく。そしてそのテーマ毎にグループが組まれ、教師が理解へと導く。理解していないことをそのままにして先へは進まない。それでも理解できない場合は、放課後に補習専門の教師によるクラスに参加する。

一方、数学が得意な生徒はどんどん先へと進む。小学校高学年で高校レベルの数学問題を解いている子もいるくらいだ。

 

■考える力を伸ばすドラマの授業

グリーンスクールは、ゆったりとした時が流れる学校である。しかしそれは決して学業軽視や学力不足を意味しない。この学校では、考える力、特に”疑問を持つ力”を重要視する。そのために、この学校では小学校低学年の頃からドラマの授業に力を入れている。

子供たちはそれぞれ何かの役になり演技をする。そして他の子供たちは、その役を演じている子に次々と質問・疑問を投げつける。その子はその役になりきって考え、答えなければならない。演じる役の心理状態や人間関係、そして時代背景などを考慮しながら。

日本ではドラマというと半分遊びみたいな印象を受けるかもしれないが、このように真剣に演じ討論するとなると、かなりの知識と深い洞察力が必要だ。

 

■学校外での活動

ここには日本の学校のような部活動もないし、学習塾なんてものもない。さぞかし放課後はのんびりしているだろうと思いきや、この学校の生徒たちは放課後が忙しい。むしろ放課後に学ぶことのほうが多いかもしれないくらいだ。

多くの生徒は、何らかのNPOなどに参加している。環境問題や貧困・教育・ジェンダー問題に取り組む団体に、大人たちに混じって活動しているのだ。学校も積極的に協力している。その生徒の活躍により、NPO団体にも学校にも、そしてバリの地域社会にも大きなプラスがあるからだ。

そんなグリーンスクールには多くの有名企業が賛同し、経済的支援のみならず人的支援も行っている。(こちらがそのリスト。残念ながら日本企業は見当たらない)

 

■ハイレベルで膨大な量の宿題

この学校の宿題のレベルの高さは特筆すべきものがある。例えば、日本でいうと中学一年生の生徒に出された宿題。

「Guns, Germs, and Steel(銃・病原菌・鉄)を読んで、最も印象に残ったトピックについて考察せよ」

ピューリッツァー賞に選ばれ、日本でも東大や京大など旧帝大教授たちが新入生に読んでおいてもらいたい本No.1に選出されるジャレット・ダイアモンドの大著だ。これを中学一年生に読ませ、考えさせる。信じられない宿題だ。

このようにグリーンスクールの教育は「エコ」とか「自然を大切に」とかいったレベルのものではない。

子供たちに当事者意識や世界の本当の姿を真剣に考えさせるのだ。

未来を本気で変えるために。

*参考:グリーンスクール