2014年8月、米グーグルは無人飛行機(ドローン)による配送システムの開発状況を動画で公開。
同様の試みは米アマゾンやドミノピザでも既に行われているが、グーグルの参入で商業利用への開発がさらに加速しそうだ。
グーグルでは、自動車の開発なども行っている「グーグルXラボ」が、2011年から無人飛行機の配送システム開発に乗り出していた。
「プロジェクト・ウイング」の実験内容
2011年から「グーグルXラボ」が行っていた無人飛行機の開発「プロジェクト・ウイング」に、途中からマサチューセッツ工科大(MIT)の専門家らもチームに参加している。
今回行われた実験は、無人機に対する規制が緩いオーストラリアで行われた。試作機による飛行試験は既に30回を超えているという。
試作機は意外に大きく、幅約1.5m、高さ約0.8mで、4つのローターを備えている。高度は60mまで上昇可能だ。
公開された動画では、オーストラリア・クイーンズランド州の農家の人が、ドッグフードを注文すると、それを空から届けるというシナリオだ。
無人飛行機は荷物を積むと垂直に離陸し、上空で翼を水平に傾けて速度を加速させる。一般的なドローンがヘリ型であるのに対し、グーグルでは飛行機型を採用している。
目的地に着くと着陸はせずに、上空でホバリングしながら品物だけをロープで下ろすという方法を採用している。これは実用化された際に、狭い街中や玄関先などでも荷物を届けられる様にとの配慮だろう。
無人飛行機は、プログラムされたルートを飛行させることを目指している。高度も一定を保ち、騒音もより少なくするように開発中だ。
実用化にはまだ数年かかるがチャレンジのメリットはある
このように米国の企業では無人飛行機による配送実験が進められているが、法的には商業用無人機の使用はほぼ禁止されている。
しかし米連邦航空局(FAA)はこの状況を変えるべく、規制の変更を検討中だ。実際6月にはアラスカ州で、米国で初となる商業用無人飛行機の飛行を承認している。
グーグルは当初、このプロジェクトの目標を緊急用としていた。例えば心臓発作を起こした人の元に、AED(自動体外式除細動器)を運ぶことや、医薬品などを届けることを検討していたのだ。
それは無人飛行機による配送には、道路渋滞を避けられることや、そもそも道路が整備されていない場所への配送が可能であるというメリットがあるからだ。当然、自動車よりも環境負荷が少ないということもある。
ただ、グーグル自身も、このシステムで同時に複数の配送を行えるようになるまでにはまだ数年かかると見ている。
それでも挑戦するだけのメリットはあるとして、各社が開発に参入している以上、開発競争が激化するだろう。無人飛行機が荷物を抱えて空を飛ぶ光景は、案外早く見られるようになるのかもしれない。
*画像出典:Introducing Project Wing