世界的なリゾート地として有名なインドネシアのバリ島。ビーチサイドには五つ星ホテルが立ち並び、内陸部ウブドの路地裏では魅惑的なヴィラがひっそりと旅する者を待つ。
しかし一歩リゾート施設から外に出ると、道路脇など町のあちこちに夥しいほどのゴミが散乱しているのを目にすることだろう。一見美しく見える熱帯雨林も、地面をよく見ると生い茂った草木の間に膨大なゴミが捨てられていることに気づかされる。
偉大な自然とともに生きてきたバリ人は、急激な生活環境の変化がもたらす事態の重大さにまだ気が付いていないようだ。長年彼らはバナナなどの葉っぱを編んで皿や袋として使い、いらなくなったらその辺に捨てていた。そしてそれと同じことをプラスチックでも続けてしまっている。
まだまだゴミ処理やリサイクルするシステムも未発達で、分別して回収するということへの動機づけがないことも一因だ。人口も急激に増えており、ゴミ問題はこの島の喫緊の課題となりつつある。
美しい島にレジ袋はいらない
MelatiとIsabelは、バリ島のグリーンスクール(GS)に通う13歳と11歳の少女。彼女たちは、こよなくバリ島を愛している。だから年々大量のゴミで埋め尽くされようとしている現在の姿が、とてもじゃないが我慢できなくなってしまった。
そこで二人は2013年に「Bye-Bye Plastic Bags(BBPB)」という活動を立ち上げた。ゴミの中でも一番目立つ、買い物に使われるレジ袋の使用をまずこの島から無くそうと考えたのだ。活動開始から二年後の2015年までを目標として!
まずは学校の集会でプレゼンを行った。すると続々と賛同者が現れ、生徒や親たちで30名ほどのグループが出来上がった。しかしたった二年間で約400万人が住むバリ島からレジ袋を無くすということは、無謀とも思えるチャレンジだ。
まず彼女たちは署名活動を始めた。島内だけではなくオンライン署名サイトAvaazで世界中に支援を求め、バリ島政府知事に届けるため100万人分の署名を目標とした。何よりもこの活動を世界中でより多くの人たちに知ってもらい、共感しシェアしてもらうことが先決だからだ。
そして島の子供たちと、小売店を営みながら家事全般を担う島の女性たちへ協力を求めた。まずはGSの周辺地域の集落から始め、小学校での環境問題に関する課外授業を重ね、女性たちに自然環境の悪化が子供たちや島の未来にどう影響していくのかを説いた。
残された時間は、あと一年
スタートから一年、次第にBBPBの活動が注目され始め、ついにバリ島政府の中からも動きが出始めて来た。2014年8月から11月の三か月間、バリ島の玄関口ともいえるデンパサール国際空港内でレジ袋根絶の署名・啓蒙活動を行える特別許可を彼女たちは得たのだ。
もちろんGS側もこれを大歓迎し、BBPBのメンバーが空港内での活動を優先できるように学校として全面サポートをする。また、この活動をインドネシア全土に広げようというインドネシア政府内の教育・環境分野での動きも出てきているようだ。
たった二年間で島からレジ袋を無くそうという彼女たちの無謀とも思える意気込みにも驚かされるが、それ以上にこのプロジェクトを本気で支えようとする人たちが大勢現れ始めていることに、驚きを超えた面白さを感じてしまう。
2015年が楽しみだ。
*写真©Bye-Bye Plastic Bags、署名はこちら Avaaz