立命館大学理工学部電子情報工学科の熊木武志(くまきたけし)講師ら研究グループは、スマートフォンでの盗撮をLED(発光ダイオード)照明によって防止するシステムのプロトタイプを開発した。
可視光線を利用した盗撮防システムの開発・発表は世界初となる。
スマートフォンによる盗撮は急増しており、警察庁の集計によれば、現在の盗撮事件の3分の2がスマートフォンや携帯電話で行われているという。しかもこの割合は増加傾向にある。
ウェアラブル端末がより多様化すれば、さらに巧妙な盗撮が増加する可能性も有り、防止策が必要とされている。
スマホにしか分からない光の変化でLEDが撮影制御
研究グループが開発したシステムは、盗撮を防止したい空間内で、光ビーコンを送信するトランスミッターとしてLED照明を利用し、スマートフォンをビーコンを受信するレシーバーとして機能させる仕組みだ。
LEDは人に感知できない光の明度の強弱パターンをスマートフォンに送信する。撮影しようとしたスマートフォンのカメラが取り込んだその光の強弱パターンを、アプリが瞬時に自動識別して端末の画面に警告を表示すると同時に、撮影機能を使えなくしてしまう。
この研究成果は、2014年5月に開催された電子情報通信学会のワークショップで、「IEEE SSCS Kansai Chapter Academic Research Award」を受賞した。
ウェアラブルの普及による盗撮被害を防止できるか
このシステムにはまだ課題がある。太陽光が入る空間では、LEDから発信された光の信号を検知する能力が弱くなってしまうと言うことだ。
また、現在はアプリでスマートフォンを制御しているが、将来的にはこのプログラムを回路化し、スマートフォンやカメラ搭載のウェアラブル端末の製造時にメーカー側で埋め込む必要がある。
これはコピー機に紙幣偽造防止機能が装備されていることと同じだ。
現在増加傾向があるスマートフォンや携帯電話での盗撮に、今後は新たにカメラ搭載型ウェアラブル端末による盗撮が加わる可能性もある。
しかし今回開発・発表された盗撮防止システムが公共の場に導入されれば、盗撮犯罪を防ぐことができる可能性がある。
また、今回のシステムはカメラ機能を使用停止にするだけでなく、音や電源の制御を行う事もできるという。
例えば電波が患者に深刻な影響を与える医療関係の空間に導入すれば、そこに入るだけで自動的にスマートフォンなどの電源をオフにするといった用途も考えられるだろう。
マナーだけを当てにできない状況であれば、このような強制力のあるシステムの開発も必要だと言えるのではないだろうか。
*画像出典:LED照明とスマホカメラの連携による盗撮防止システムを開発~駅や電車などの公共空間を制御し、スマホ等による盗撮被害を防ぐ~ – HEADLINE NEWS – 立命館大学、可視光を利用した盗撮防止システムの開発~スマホ等による被害を防ぐために~(PDF)