5月29日に、米ベンチャー企業のスペースX(SpaceX)社は、カリフォルニア州にある本社で、宇宙飛行士をISS(国際宇宙ステーション)に運ぶための有人宇宙船の試作機を報道陣に公開した。
この宇宙船は「ドラゴンV2(Dragon V2)」と名付けられており、乗船できる人数は最大で7人だ。
小型だが近代的なデザインの宇宙船の中は意外に広い。シートも自動車のシートのような洗練されたデザインであるのは、報道陣を前に説明を行ったイーロン・マスクCEOがテスラ・モーターズの会長兼CEOでもあるせいかもしれない。
コントロールパネルにもSF映画の宇宙船の様にタッチパネル式の大画面が備わっている。
2017年には初飛行を目指しているという。
再利用可能な宇宙船
米国では、2011年にスペースシャトル計画が終了したため、ドラゴンV2が稼働し始めれば、ISSへ宇宙飛行士を送り出す機能を民間のベンチャー企業が担うことになる。
ドラゴンV2はISSに自動的にドッキングでき、地球に帰還する際もパラシュートではなく、エンジンを噴射して目的の基地に正確に着陸できる能力がある。
ドラゴンV2と名前にもバージョンが記されている通り、ドラゴンには前バージョンが存在した。
前バージョンのドラゴンは、2012年にISSに物資を運んだ初めての民間無人宇宙船で、物資の輸送を4回成功させている。ただし、このときはまだ、地球に帰還するときにはパラシュートによる海上への落下だった。つまり使い捨てだったのだ。
しかしドラゴンV2はエンジンを噴射して、イーロン・マスクCEOによれば「ヘリコプター並の精度」で目的地に着陸できるという。そして、ドラゴンV2が再利用可能な宇宙船であることも強調した。
民間の宇宙船開発競争が始まっている
民間企業による有人宇宙船の開発は、スペースX社だけが挑戦しているわけではない。
同社には、米航空機・防衛大手のボーイング社や宇宙関連企業のシエラネバダなどが競合相手として存在している。いずれもスペースX社が目標としている2017年辺りを有人宇宙船実用化の目標としているのだ。
これらの企業の内、いずれが有人宇宙船の実現に先行するかまだ分からないが、いずれにせよ現在宇宙飛行士一人当たり7000万ドル(約71億円)必要なロシアのソユーズ宇宙船だけが頼み、という状況は変えることになる。