ホームステイ先の英語の”訛り”を気にする人が、日本人にはまだまだ多い。しかし、世界で実際に話されている英語の大部分は”訛り”のある英語だ。英語を母語とする人々が4億人、そして準母語とする人々が4億人。だが、外国語として英語を使う人々は10~15億人にものぼるとされる。
日本人は完璧主義な性格からか、発音や文法にどうしてもこだわり過ぎてしまうようだ。でもそんなものは、余程の名門私立校へでも留学しようと考えている人以外には必要ないだろう。
多くの日本人にとって本当に必要なのは、シンプルなセンテンスで自分の言いたいことを的確に伝える能力や、さまざまな”訛り”のある英語を聞き取れる力なのだから。
移民家庭のお得感 ~メルボルンにて
ホームステイの醍醐味は、”どんなファミリーと出会えるか”というところにある。結局のところホームステイの成否は、”人と人”の相性にかかっているところが多いからだ。相性が良ければ、会話も弾む。会話が弾めば、英語力も上がる。
そこには”ネイティブか、ノンネイティブか”なんていうことの差はほとんど無いように思える。もちろん高度な英語力を求めるなら別ではあるが。ただ、”ネイティブ”な家庭でのステイ費用は”ノンネイティブ”のそれよりも高くなることが多い。
相性というリスクを考えたら、コストパフォーマンスの高い”ノンネイティブ”である移民家庭にホームステイするという選択は、非常に魅力的だ。
私は’13~’14の冬休みを息子とメルボルンで過ごした。ホームステイ先はワインの産地として名高いヤラバレーに程近い市郊外の丘陵地帯。三食付きで週3万円ほどのホームステイとしては割高な値段だが、家や庭が大きいというのと、プールがあるというところに惹かれた。これなら息子が伸び伸び遊べる。
レンタカーを運転しながらGoogle Mapでナビしてもらい辿り着いたのだが、いきなり不安になってしまった。外の道路から入っても、どこまでいっても家に辿り着けない・・・
野ウサギが走り回っている芝生の道を抜けると、ようやくステイ先の家に辿り着けた。そこはまるでホワイトハウス(笑) 私は何か騙されているんじゃないかと心配になってきた。
高さ3m以上はあろうかという巨大な重い扉を恐る恐る開けたのち、ホストファミリーに迎えられようやくひと安心。聞けば彼らはイランからの移民で、建築関係で成功したとのこと。一族郎党をイランから呼び寄せ、メルボルンにいくつかあるイラン・コミュニティの中心となっている家だった。
ホームステイは”食”が命
この家には毎日のように多くの人々が出入りをしていた。イラン系、インド系、中華系・・・。人々が集まった時の会話は主にペルシャ語だが、非ペルシャ系や私たち親子が加わると、自然と英語に切り替わる。インド系の強烈な英語にも耐性ができた。
何よりも感動的だったのが、ペルシャ料理だ。ハンバーガーとピザが主食かと思えるオーストラリアにおいて、毎日のペルシャ料理は別世界にいるような心地。
冒頭写真のサラダは、ネギやニラ、各種香草がふんだん使われたもの。彼らはハーブが大好きだ。これを大量に生でバリバリ食べる。飲み込んだ途端に体の中がジンジン熱くなってくるのが分かるほどだ。これを食べ始めて一週間もすると、体から彼らと同じ香りが漂ってくる。
また、胡瓜・玉ねぎ・トマトをぶつ切りにしたサラダシラーズも定番。
主食は日本と同じくコメ。色鮮やかなサフランライスをもりもり食べる。そして日本人以上にお焦げが大好きだ。
コメも麺類も、とにかく焦がす。
そしてデザートやおやつも堪らなく美味い。
小麦粉とヨーグルトと砂糖を練ったものを揚げた、おやつの定番ズールービヤー。強烈な甘さが病みつきになること間違いないだろう。
サワーチェリーを酢漬けにしたアールバールは、日本でいう梅干しや漬物みたいな気軽なつまみだ。
メルボルンの夏の行楽として人気のサクランボ狩りで大量に採って来たものを、各家庭でジャムにしたり酢漬けにする。ペルシャ版お母さんの味。
移民家庭が定番になる日
英語が不自由な日本人にとって、英語圏で暮らす”非ネイティブ”の家庭はとても理想的だと言える。英語がうまく使えないことに対するもどかしさや苛立ちを理解してくれることが多く、ネイティブではないからこそ、どうやったら通じるようになるのかをよく分かっている。
そして、何よりも食事がおいしい。そして週末には一族や友人たちが集まり盛大なパーティーをすることが多いので、賑やかで退屈しない。グローバル化する世界だからこそ、これからは移民家庭でホームステイをすることへの価値も高まってくるだろう。