ロボットの指先に、感触が与えられたらどうなるだろうか。
その興味深い研究を行っているのはMIT(マサチューセッツ工科大学)ととノースイースタン大学の研究グループだ。
公開された動画では、ロボットの手がUSBケーブルの先端を挟み持って、それをUSBポートに差し込むという人にとっては単純な作業を行っているが、実はこれが高度な技術を必要としている。
このロボットは工場の生産ラインに設置されている産業用ロボットの様に、予めプログラムされた部品を動かしている訳ではないからだ。
指先の感触を頼りに、機能しているのだ。
「感触」をロボットの指に与える技術
このロボットの指先に取り付けられたのは「GelSight」と呼ばれるセンサーだ。
精密な作業を行う産業用ロボットの場合は、扱う部品の形状や大きさが事前に正確にプログラムされ、また部品を設置する場所も正確にプログラムされていなければならない。
しかしロボット自身が、自分が手にした部品の形状や大きさを理解できればどうだろうか。
このロボットに取り付けられた触覚型のセンサーである「GelSight」は、他の多くのセンサーと異なり、対象物を触った上で、光学的かつコンピュータービジョンアルゴリズムによって形状や寸法を把握している。
「GelSight」は透明な合成ゴムの板でできており、その合成ゴムの片面には反射性のメタリック塗料が塗られている。そこを内側からLEDの光で照らすのだ。
そのため、このゴム板が物体に触れると、その形状によって変化した反射型塗料が塗られている側の形状の変化を光学測定し、3次元構造を認識し、加えられている力を計算できる。
この「GelSight」が認識できる凹凸の認識は、人間の指先より約100倍デリケートだという。
そして今回公開された動画でロボットが行っていることは、ぶら下がっているUSBプラグを二本の指で挟み持った際、「GelSight」で感じ取ったUSBのシンボルの僅かな形状(凹凸)からプラグが指にどのように挟み込まれたかを認識することだ。
そのことで、正確にポートに差し込むことができたというわけだ。
ロボットが感触を得られるという可能性
この感触を得ることができるロボットの可能性はどのようなものだろうか。
単により繊細な作業、例えば複雑な形状のものや柔らかい物を扱える、というだけでなく、異なる形状に柔軟に対応出来るオートメーションも可能にするだろう。
また、人間を相手にしなければならない介護現場での作業などでは、手加減する、といった繊細な動きを行えるようになるかもしれない。
以前取り上げたPepperなどのような家庭用ロボットが感触を認識できるようになれば、高齢者や子供達への対応の仕方も変わってくるかもしれない。