日本では人型ロボットや、身体に装着するパワースーツタイプのロボットなどが脚光を浴びているが、アメリカの大学などでは、もっと特定の目的に特化した「器官」に近いようなロボットの研究が盛んであるような印象だ。
そのなかでも、現在「ソフトロボット」は旬のジャンルのようである。金属や硬質プラスチックではない柔らかい素材で覆われたロボットで、ものをつかんだりするのに都合がいい。安価な3Dプリンターやレーザーカッター等の出現によって、ソフト・ロボット工学は今や非常に活発な分野になったようだ。
ソフトな素材がロボットの活躍の場を広げる
従来の硬質ロボットのノウハウも使いつつ、柔らかい素材を使うことで、身体の治療やダメージの少ない外科手術、災害時の探索と救助など、これまでよりさらに幅広い用途に、ソフトロボットの活躍が期待される。
そしてハーバード大学が、そんなソフトロボットを作るための基礎的なノウハウいっさいがっさいを閲覧&ダウンロードできるようにした「ソフト・ロボット工学ツールキット」を公開した。それを紹介しているのがこのすぐ下の動画だ。どんなものが作れるのか、どんなものが紹介されているのか、そしてできあがるソフトロボットのユニークな動きも見ることができる。
これは、ハーバード大学とトリニティ・カレッジ(ダブリン大学)がコラボして提供するもので、柔らかくフレキシブルな素材を使ってロボットを作る際に必要なデザイン、組み立て、制御の方法などの基本を開示しているものだ。
論文ではない、モノづくりのためのガイド
ソフト・ロボット工学を志すひとにとってはこれは宝箱のようなキットだといえるのではないだろうか。情報は開示され、ダウンロードが可能で、教則ビデオを見ることもできる。単なる研究論文ではなく、現物を製作するための超実践的なノウハウを教えてくれるのだ。
このツールキット公開の目的はもちろん、この分野の研究開発を活発にすることで、ソフト・ロボット工学全体の進歩を促進させることだ。基本的なノウハウを世界中の学生、研究者、趣味人、エンジニアが容易に入手できれば、そこからの発展は各人しだい。新しいデバイス、道具、方法論の登場が期待できる。
「ソフト・ロボット工学ツールキット」のWebサイトは「Soft Robotics Toolkit」。ここから、ソフトロボット工学の進歩が世界中で一気に加速するかもしれない。ロボット工学を志す個人から団体まで、ひと目のぞいてみてはいかがだろうか。