スタンフォード大学から独立した民間の研究機関、SRI InternationalがDARPA(米国防高等研究計画局)と共同開発したマイクロ・ロボット。全長数ミリしかない小さなロボットだが、最高速度で秒速35cmと非常に素早く、壁を上り、曲面を移動し、団体行動も行う。
しかも協力し合って製造作業も行える。
このマイクロ・ロボットはSRI Internationalが特許を取得している反磁性マイクロ・マニピュレーション技術(Diamagnetic Micro Manipulation : DM3)によって作動しているという。
マイクロロボットを動かす技術
マイクロ・ロボットの活用方法は今後様々な用途に見いだされるだろうが、この記事でも紹介しているSRI Internationalが公開した動画では、小さな建造物を建設している様子が映されている。
まるで虫が建築作業員として働いている様に、ロボット同士が連携して作業している。
1体が炭素繊維で作られたロッドに接着剤を塗ると、もう1体が新たな建材を運んできて接着するといった協業を行う事ができている。
この動画中のマイクロ・ロボットたちは非常に高速で動いているが決して早回しではない。これが実際の速度なのだ。
この全長数ミリのマイクロロボットは基板から発生させた磁場で制御されている。
実は磁場を利用して制御するロボットはこれまでにも開発されていたが、複数が別々の動きをすることが難しかった。
しかしSRI Internationalはこれを、回路盤によって局地的な制御を可能にするという革新的な技術を開発した。
そのため、映像にも映されているが、数十体のマイクロ・ロボットがお互いに干渉し合わずに動くことができている。
この研究は、製造現場で高品質の製造を低コストで高速に実現することを目的としたDARPAのオープン・マニュファクチャリング・プログラムの資金提供を受けて行われた。
従って、将来的には軍需への応用もあるかもしれない。
製造業やバイオテクノロジーへの応用
マイクロ・ロボットは、その細かく正確で素早い動きから、応用できる分野はいろいろと考えられそうだ。
電子機器の製造だけでなく、バイオテクノロジーなどにも活用されるかもしれない。
SRI Internationalでは、まずは高品質なマイクロスケールの製品製造などへの応用を想定しているようだ。
近い将来、誰もおらず、大きな工作機械も見当たらない休業中に見える工場で、作業台の上を注意深く見たら、虫の様な小さなロボット達が一糸乱れない動きで活発に働いていた、といった光景に出くわすかもしれない。
*画像出典:Magnetically Actuated Micro-Robots for Advanced Manipulation Applications | YouTube