人間にはエゴがあるがロボットにはない。
人間は独自の判断で行動をしてしまうことがあるが、ロボットは定められたアルゴリズムに従って行動する。チームで活動するなら、あんがい人間よりもロボットのほうが向いているのかもしれない。
ミシガン技術大学のチームが、災害時に携帯電話基地局の電源を復旧させるために働くロボットチームの開発を行っている。災害時には送電が止まることが多いが、基地局への送電が止まると携帯電話も使えなくなる。
したがって救助を必要としている人の通信手段が途絶えてしまう。それを防ぎたいというのがコンセプトだ。もちろん救援者同士の通信手段も確保できる。
携帯電話の基地局が簡単にたどり着けない場所にあることも多いということで、人間より先にロボットチームを展開することができれば、復旧も迅速にできるはずだというのが、ロボットを使う理由だ。
基地局の機器に電源を接続する
計画しているロボットは、バッテリーや太陽光発電装置、あるいはそのほかの発電機を運び、電源を必要としている機器に接続することができる。ロボットは各自で最短距離を判断し、障害物を回避しながら移動する。
今回紹介する動画では、まだ実験用の小型ロボットなので、まるでオモチャのように見えてしまうかもしれないが、この次の段階では実際のサイズのロボットによる実験を想定している。現時点では、下の動画で小型試作ロボットの動きをご覧いただきたい。
もっとも、日本の携帯電話会社(NTTドコモ)の資料を見ると、災害時にはまず急激な通信集中による通信障害のほうが、送電ストップなどよりも深刻なケースが多いようだ。
また、送電ストップや基地局そのものの損傷時には、電源車や移動基地局を送り込んでしまうので、日本においては電源復旧用ロボットにそれほど需要があるのかどうかは疑問である。海外の基地局事情がどうなのかはわからないが。
携帯基地局だけを想定しているわけではない
もっとも、このロボットチームも携帯電話基地局の電源復旧というテーマを掲げているが、想定している用途はそれだけにとどまらない。軍事用途としても、前線基地にいち早く電源設備を設置したり、あるいは海洋における捜索活動などでも活用したい意向だ。
行方不明になったマレーシア航空370便の捜索において、海中捜索機は燃料補給のためにいちいち戻ってこなくてはいけなかったというが、このミシガン技術大学が開発するロボットは、お互いが相手に充電できる機能も持っている。そのような機能があれば、探査機本体はいちいち海上に浮上せずに済む。
今後、危険や困難をともなう場所で活動するロボットは、単独のものではなくチームで活動するタイプのものが増えていくのかもしれない。