アメリカとYAの転機
転機はじわじわと、そして突然やって来た。
冷戦下で膨らみ続けた軍事費と、新興国日本の台頭による巨額の貿易赤字は、じわじわとアメリカ経済を蝕んだ。そのしわ寄せは、巨額の教育費削減となり、全米の子供たちを襲う。学校から教師が次々と去り、音楽やスポーツの時間が消えた。低所得者が多い地域の学校は荒廃し、大きな社会問題と化した。
YAはその活動を、全米の学校へ出張するというスタイルに移す。
アウトリーチと呼ばれる2〜3日間のワークショップで子供たちに歌やダンス、そして表現することの楽しさを伝え、最後には全員で1時間のショーを親たちに見せる。ツアー期間中は参加者の家へホームステイしながら各地を転々。子供たちやその家族もアウトリーチという体験を共有し、ともに作り上げていくことを重要視する。
”アメリカの模範を示す”という役割から、個人主義や無関心で分裂していた”人々の心を一つにする”という役割への転換だ。
アメリカのエンターテイメントを世界に
そして、冷戦終結と東欧の民主化は、もう一つの転機を与えた。
アウトリーチの世界ツアー開始と、非アメリカ人のYAへの参加が本格化。”模範的なアメリカの若者像”であるYAから、”アメリカ的エンタメ文化の楽しさを世界へ伝える”YAへの転換。
様々な国籍の若者が加入したことにより、現代アメリカ社会やグローバル世界の多様性がそのままYAに縮図化された。名前だけはヤング”アメリカンズ”のままだが、もはや”アメリカンズ”はアメリカ人のことではなく、多様な”アメリカ文化”を指す言葉となる。
折しもこの時期、長らく低迷していたディズニーなどアニメシーンやブロードウェイのミュージカルシーンが復活し、世界市場に向けて新しい戦略を打ち出し始めた。YAの世界ツアーは、その下地作りとしての役割も果たすことになる。
彼らはディズニーやブロードウェイのヒット作品をメドレーにして演じ、アメリカ音楽のヒットナンバーを子供たちと歌い、踊る。最後のショーを観る聴衆も含め、その影響力は計り知れない。
Next 日本にて、そして未来へ