ネコは高いところから落ちたときでも、必ず足から着地するといわれる。またアスリートは転んだときや、ジャンプから着地したときに、しなやかに受け身をとることでケガを防ぐ。ロボットは? ……突っ立ったまま倒れているではないか!
ロボットも受け身をとれば壊れにくいはずじゃないか。ジョージア工科大学の研究者Karen Liu氏らが、ネコやアスリートの身のこなしをロボットに応用することを考えた。落下する際のネコやダイバー、空間での宇宙飛行士の身のこなしを物理学にまで掘り下げ、それをロボットが落下したときに衝撃を低減させる動きに応用する研究を行ったのだ。
落下の際の身のこなしと、その際の衝撃を測るために使った実験装置がユニークだ。ロボットはシャモジかラケットをふたつつないだような、シンプルな形だ。しかし、ネコのように素早く動くことはできない。
そこでエアホッケーのように空気を吹き出すテーブルを傾けて設置し、ロボットをその上で滑らせることにしたのだ。こうすれば、ゆっくりとした落下を再現できるので、ロボットの動きがネコほど素早くなくても大丈夫だ。
Liu氏らはこの実験装置を使って、衝撃を低減する”やわらかいロールパンのような”着地方法を探った。そこでわかったのは、着地の角度が、ダメージを大きく左右するということだ。
ロボットに受け身は、まだ無理だった
けっきょくのところ、現時点のモーターやサーボの技術ではネコのように衝撃を吸収する動きの素早さはロボットでは実現できないらしい。ただし、それと同時にこの研究では、ネコのような着地をするには、空中で姿勢制御をするための高度な計算ができる脳の機能が必要であることもわかった。
Liu氏は「人間の脳は、安全な着地ができるように空中で適切な身のこなしができるほどの計算能力を持っていない」という。
また、同僚研究者のUeda氏は「理論的には、どんな姿勢で、どんなスピードで落下しても、空中で姿勢を変えて着地の角度をコントロールすることは可能です。でも、実際には関節の可動範囲や筋肉の強さといった限界もあって、われわれは十分なスピードで姿勢を変えることはできないのです」といっている。
どうも、この研究によれば、人間もネコのような安全な着地はできないようだ。そしてこの研究は、将来的にロボットが十分スピーディな動きをできるようになったときには、人間にはできないけれどもネコにはできる高度な離れ技をロボットに教え込むことを目的にしている。
けっきょく現時点では、ロボットに受け身を教え込むのは時期尚早だとわかった。しかし、いずれ実現したとしたら、ロボットは少々バランスをくずしてもかまわないように作られるようになり、転んだ状態から起き上がるロボットが頻繁に見られるようになるかもしれない。
*出典:Georgia Tech College of Computing -Cats and Athletes Teach Robots to Fall-