東ティモールの課題
東ティモールの経済は極度に石油に依存している。国家歳入の96%が石油部門で、農業・工業はGDP比でもわずか4%。オーストラリアの採掘業者から得た収入を基に作られた石油基金だけが唯一といえる国家の財産で、それを毎年切り崩し、場当たり的な公共工事を行い、増え続ける若者と失業者に仕事を与えているのが現状だ。
学校に行けない子供も多く、生活に追われる両親に放置され、路上にたむろする子らも多い。ストリートは麻薬や売春などへの近道でもある。
戦火によって破壊し尽くされた衛生・医療・教育・農業土木などの重要な社会インフラは後回しにされ、この国の未来への道筋が全く国民に示されていない。政治の中枢を占めるかつての英雄たちは、度重なる汚職問題と役職のたらい回しで国民からの信を失いつつあり、この国の未来は明るいとは決して言えない。
しかも、唯一の収入源である油田は、あと数年で枯渇すると試算されている。そうなったら国家は再び崩壊してしまうだろう。
この国の未来
「何もない国だからこそ、そこにチャンスはある」
持ち前のポジティブさでベラはこう語る。立派な街並みや工場が無く、畑や山ばかりであることを恥ずかしいと思わなければいい。農薬や化学肥料を買えないんだったら、むしろそれを”売り”にしていこう。この国の未来は、有機農業と環境教育にある。
子供や女性を支援する団体サンタナを立ち上げ、首都郊外にある小高い山の上に私財を投じ、荒れ地を整備し畑を作り、多くの花や木を植えた。そこに環境教育学校を建設し、キャンプや授業を通して子供たちに農業や食育、環境への意識を持ってもらいたいとベラは願う。賛同者も集まり、事業は順調に進むかと思われた。
政府からの補助金が下りる直前、急に「前例が無い」という理由でこの事業への支援は却下された。女性がトップに立つ団体に国家が補助金を与えることなど、男尊女卑が根強いこの国ではまだ許されることではなかったのだ。しかし、支援の手は日本からも差し伸べられた。
ハワイ大学時代に知り合い親友となった濱川明日香さんが立ち上げた団体Earth Companyは、その活動の一環としてベラの学校建設をサポート。クラウドファンディングREADYFORにて寄付金を募集し始めた。多くの支援の輪が広がれば、年明けには夏休みキャンプで多くの子供たちの笑い声がこの野山に響き渡るかもしれない。
*画像出典:READYFOR、Bella Galhos、一般社団法人Earth Company