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ごく簡単なガス検知センサーで食品の腐りはじめがわかる

私は食品に表示された賞味期限を参考にはするが、厳密に守ることはしない。前日まで美味しく食べていたものが午前0時を境に食べられなくなるなんていうことが起こるはずがないからだ。でも、食品が腐敗していたら、それがわかる仕組みがあればもちろんありがたい。どうすればいいか? ひとつには発生するガスを検知するという方法があるだろう。

そんなことが可能なセンサーをMIT(マサチューセッツ工科大学)の研究者が発表した。もちろん、大がかりでコストがかかるものでは実用にならない。すごくシンプルで、コンパクトで、安価なものだ。MITのウェブサイトで紹介されている。

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MITで開発されたのは、シンプルなセンサーを使ってワイヤレスで有害ガスを検知し、スマートフォンで簡単に情報を取得できるものだ。安価でさまざまなところに設置することができる。

公共の場所で大気の状況をモニターしたり、倉庫で職員の腐敗を検知したりすることが容易になる。研究チームによれば、アンモニアガスや、過酸化水素、シクロヘキサンなどを検出できたという。

NFCタグを改造して作る

そのセンサーというのが非常にユニークだ。NFCのタグにちょっと手を加えたものなのだ。NFCタグとは、最近商品のパッケージなどにもときどき貼られているシール状の情報記憶媒体だ。NFC対応のスマートフォンなどNFCリーダーをタッチするだけで情報を読み取ることができる。

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ご存じのひとも多いだろうが、NFCタグは充電したり電源を接続する必要はない。NFCリーダーをかざすと、スマートフォンから13.56MHzの電波が出て、NFCタグの回路内に電磁誘導によって電流が流れ、NFCリーダーに情報を伝える仕組みだ。

そして、このMITの研究者が開発したセンサーというものは、NFCタグに穴を開け、回路を切断する。そして代わりにカーボンナノチューブを使って回路を引き直すのだ。それにはカーボンナノチューブを圧縮したものを芯に使った鉛筆を使う。なお、研究チームはこのNFCタグのセンサーにCARDsという名前を付けた。chemically actuated resonant devicesの略だ。

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カーボンナノチューブが特定のガスと反応すると、電導性に変化が生じる。するとNFCリーダーで読んだときの周波数にも変化が生じるのだ。そこで、NFCリーダー(NFC対応のスマートフォンでいい)のほうで、CARDsがガスを検知したことを知ることができるのである。

なお、現時点ではCARDsひとつにつき、1種類のガスにしか対応できない。ただし、スマートフォンの側では、何種類ものCARDsに対応できる。

このシステムのメリットは、センサーであるCARDsが非常に安価であり、また一般に普及しているスマートフォンで読み取ることができるところだ。そのため、さまざまな使いかたが考えられる。工場内の空気の成分を検知して労働環境をモニターしたり、食品が腐敗してきたら発生したガスからそれを検知することができる容器なども可能になるかもしれない。

派手なデバイスではないが、意外と身近なところで活躍し、われわれの生活にも影響を与えるかもしれないアイテムだ。

下の動画でも、このCARDsの加工のしかたなどを見ることができる。

*参照および画像出典:MIT News -Detecting gases wirelessly and cheaply-