2014年は、政治、経済、国際情勢など様々な話題があったが、FUTURUS的には、ドローンと3Dプリンターの話題が多かったような気がする。
特に3Dプリンターは地上のみならず、いよいよ宇宙に持ち出して使われる試みが始められた。
これには、長期間の宇宙旅行や、遠く離れた宇宙空間や惑星上で、必要な道具や部品を現地調達するといった壮大な実験の始まりと見られる。
一方、地上では3Dプリンターが出力できる素材の多様化が進められ、3Dプリンターの用途が広がる可能性を示し始めたと言える。
今回は、これまでFUTURUSで取り上げた3Dプリンターの記事から、特にユニークであると筆者が独断で選び出したものを紹介したい。
特にユニークだった2014年の3Dプリンター5選
オーストラリアのベンチャー企業で有るAurora Labs(オーロラ・ラボズ)社が、とうとう金属を出力できる3Dプリンターを個人向けに開発した。
それまで数千万円だった金属を出力する3Dプリンターを、40~50万円で販売することにしたのだ。
金属を出力する3DプリンターはSLS方式と呼ばれるタイプで、インクの代わりに金属製粉末を利用し、レーザー照射で溶かしながら形状を作り上げる。
コインの表面の模様の様なかなり細やかな形状まで再現でき、鋳造並の品質を得られる。
この3Dプリンターによって、金属部品の試作品作成が容易になるだろう。
次に登場したのは、トロント大学の研究チームが開発した3Dプリンターで、なんと、人間の皮膚が出力できるというものだった。
その出力される皮膚には、毛穴や汗腺まで備わっており、移植に使うことが目的とされている。
この技術が進歩・普及すれば、皮膚移植のために、患部以外の皮膚を切り取って移植する必要が無くなる。
しかも患者自身の細胞をもとに出力するというから、拒否反応も避けることができる。
3Dプリンターがバイオテクノロジーのツールとして期待されるニュースだった。
金属、皮膚と驚くべき物を出力する3Dプリンターだが、ついに建築素材を出力するところにも広がった。コンクリートである。
イギリスのラフボロー大学が開発した。
コンクリートはこれまでも様々な形状に固められてきたが、3Dプリンターを利用すれば、これまで不可能だった形状のコンクリート部材を作ることもできるようになる。
そのことで、建築物のデザインもより自由度が上がり、これまでにないユニークなデザインの建築物が登場するかもしれない。
金属、皮膚、コンクリートと続いたが、次はLEDを出力してしまう3Dプリンティングの紹介になる。
しかもただのLEDではない。紙のように薄くて柔軟なLEDを出力してしまうのだ。つまり、これから我々は、照明器具を貼り付けることができるようになる。
この技術を開発しているのは米Rohinni社というスタートアップ企業だ。そして出力されるLEDは「LightPaper」と名付けられた。
3Dプリンターを使って、赤血球と同じくらいの大きさのダイオードを混ぜたインクを、導電性の有る薄いシートの間に挟み込んで出力することで紙のようなLEDができるという。
ただし、まだ開発途上で、2015年中に発売する見込みとされている。
金属、皮膚、コンクリート、LEDと出力してきた3Dプリンターは、とうとう食料を出力するところまで進む。
つまり、3Dプリンターで料理してしまおうというのだ。投資したのはNASAで、開発にあたったのは「Systems & Materials Research Corporation」。
つまり、宇宙で様々な食品を3Dプリンターで出力できるようにしようという目論見らしい。つまり、レシピデータを3Dプリンターが受信すれば、その食品を出力してくれるのだ。
あるいは家庭でも、インターネット上からレシピデータをダウンロードして3Dプリンターで出力することができることになる。
既にドイツのTNO Reserchでは、3Dプリンターが食品を出力するためのインク(粉末)を開発している。
現在はまだ、ピザ一枚出力するのにもかなり時間が掛かるので、冷凍食品を電子レンジで解凍した方が手っとり早いが、このような研究開発が、どこかで予想外の方向に開花する可能性もあるかもしれない。
2015年も3Dプリンターから目が離せない
以上の様に、2014年は3Dプリンターの技術的進歩や多様性だけで無く、価格のダウン、あるいは小型化もかなり進んだ。
この動きは今後も続くはずで、2015年には3Dプリンターの企業や個人への普及が進み、様々な素材で試作品を安価かつ容易に作成出来ることが、新しい製品を世の中に生み出す強力なツールとして活用されるようになるだろう。
2015年も3Dプリンターの進化に注目だ。