日本人の死因の約6割である生活習慣病。生活習慣病は加齢や生活習慣などの影響が大きく、今後”超高齢化社会”となる日本では、仕事場にも年齢構成の変化に伴って、生活習慣病になるリスクを高める構造的な問題が内在しているといえる。
そこで、厚生労働省が健康分野にビッグデータを活用する動きを見せた。そのひとつが、同省が推進を決定した「データヘルス計画」である。
レセプトの電子化を活用「データヘルス計画」
2013年の6月に閣僚決定した「日本再興戦略」などをふまえ、厚生労働省では、全ての健康保険組合が2014年度中に「データヘルス計画」を作成し、2015年度よりPDCAサイクルで実施することを義務付けた。
国民の健康データは、約7年も前、2008年からスタートしている特定健診制度により、電子的に蓄積されているのをご存知だろうか。
この制度により、レセプト(診療報酬明細書)の電子化、健診データの電子的標準化が実現している。全国で同じ様式で電子的に蓄積されているため、健康保険加入者の健康状況を経年推移でとらえたり、ほかの健保組合と比べ、どのような特徴があるのかを知ることができる。
しかし、まだまだ活用されていないのが実情のよう。
今回このデータヘルス計画で、いわば「健康分野のビッグデータ」の活用を行い、国民の健康レベルを改善しようという狙いだ。
データに基づく保険事業&メーカーの展開
すでにいくつもの保険事業組合では、データヘルス計画の実施展開が行われているようだ。そのいくつか事例を紹介しよう。
■綜合警備保障健康保険組合の事例
被保険者の約7割は、不規則な生活となる昼・夜二交代制で働いており、データを分析したところ、メタボリックシンドローム対象者や予備群に該当する者が他健保組合よりも多いことがわかった。
メタボの対象群よりも新規でメタボ対象になる人のほうが多いことに着目し、肥満基準値前後の人をメインターゲットとした健診前キャンペーン「ハッスル☆減量ゲーム」を実施。専用サイトでポイント付与や賞品交換といったインセンティブも設け、結果的に特定保健指導該当者を減少させることに成功している。
■ローソン健康保険組合の事例
ローソン健康保険組合では、健診”未”受診者とその上司に対してディスインセンティブを課す施策を実施することを会社の方針として決定。内外部からの反響はとても大きかったという。

さらに『マチの健康ステーションアプリ』やフェリカが付いた歩数計を配布。日常生活を記録することで、健康に対する意識づけを行い、習慣化を図っている。目標が一定期間達成されると、ローソンの商品クーポンが付与される仕組み。
■パナソニックヘルスケアのツール開発
また、メーカーも支援ツールを開発している。診療報酬明細書を作成するコンピュータ、レセコンで培った長年の経験があるパナソニックヘルスケアは、健康管理システム『ウェルスポートナビ(WellsPort Navi)』を発売。データヘルス計画の実施を促進する狙い。

健診データの経年変化などをグラフで見える化し、さらにウォークラリー、歯磨きラリーなどイベントによる健康意識を向上させる仕掛けを設け、加入者が継続的に取り組むための各種案内通知やポイント付与といったインセンティブの仕組みも用意されている。
ここに挙げたものはほんの数例であり、各保険組合では様々な取り組みが行われている。今年は、健康・医療分野におけるビッグデータ活用がますます加速するだろう。
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【参考】
※ 健保加入者の健康づくりを支援するツール「ウェルスポートナビ(WellsPort Navi)」―パナソニック ヘルスケア株式会社