東ティモールが抱える構造的問題
東ティモール経済の奇妙さは、その経済指数によく表れている。2011年にはタイと肩を並べるまで東ティモールの1人当たりのGDPは伸びた。
しかし、国民の約7割が1日あたり2ドル未満で暮らすアジア最貧国という矛盾。そんな社会の歪さは、2012年以降のGDP値急落という形で露呈した。わずか3年間で1人当たりのGDPが30%も減少したのだ。
そして2015年、追い打ちをかけるようにGDP比率20%超という歳入減が待ち受けている。
東ティモールの経済は石油が全てだ。石油以外の産業はほぼ皆無。スターバックスが扱うフェアトレード・コーヒーなどが有名だが、経済全体に占める農業部門は僅か数%にしかならない。
インドネシアとの長きに亘る戦いで、国土は焦土と化しインフラは破壊し尽くされた。さらには世代間による文化的断絶も深刻だ。
指導者層で使われる旧宗主国のポルトガル語、占領時代に強制されたインドネシア語、独立後に普及を図った本来の言語テトゥン語、国連統治やインターネットの普及で広がった英語。世代や階級によって話す言語が違う東ティモール社会は、常に相互不信と分裂の危険性をはらむ。
国家存続の危機
産業を持たない東ティモールが独立国家としてスタートできた背景には、国際支援によるところも大きいが、何と言っても“石油基金”の存在があるだろう。
オーストラリアやインドネシアに利権の大部分をコントロールされてはいるものの、人口僅か120万人の小国には十分な規模のファンドである。
大部分がFRB米国財務省短期債券として運用されているこの石油基金は、近年の原油高という追い風も受けて、2014年には168億ドルまで積み上がった。これは東ティモールの10年分の国家予算に匹敵する。
当初は税収の不足分を補い、教育や福祉といった社会投資をすることがこの基金の目指すところであったが、いつの間にか基金自体を切り崩しながら国家運営をすることが常態となってしまった。こうなると、もう歯止めが効かなくなるのは世の常といえる。
平均で6人の子を持つ高過ぎる出生率は、慢性的な学校教育の不足、若年層の高い失業率となって社会に大きな負担と不安を与える。切り崩した基金の大部分は海外からの食料品・生活用品の輸入と、場当たり的な公共事業へと費やされ、未来への投資は為されぬままだ。
しかも、この唯一ともいえる国家財産は、近い将来の原油枯渇で危機を迎えることがわかっている。このまま切り崩しが常態化すれば、原油の枯渇前に基金自体が枯渇することも……。
Next この国の未来を変えるために