人工衛星による新しいネットワークの構築というアイデアは以前からあった。しかし、世界的な実業家が着手したとなるとニュースバリューが違う。実現の可能性が高くなるからだ。そして、ふたりのビッグネームがこの計画を発表した。
衛生による高速インターネット
ひとりはテスラモーターズやスペースXで有名なイーロン・マスクだ。これは『Bloomberg Businessweek』が報じている。
マスクは宇宙輸送企業のスペースXのイベントで、通信衛星による新しいネットワークの構築というアイデアを発表した。これはふたつの狙いがある。ひとつはインターネットの通信速度のさらなる向上、もうひとつはまだインターネットに十分アクセスすることができない30億以上の人に、高速で低コストなインターネットへの接続を可能にすることだ。
現在宇宙には、1,200km近辺の高度に数多くの人工衛星が飛んでいる。これは従来の通信衛星の静止軌道である高度3万5,000kmよりずっと低い。そして高度が低い衛星を使った方が、電波を地表と送受信する距離が短くなるため、より高速なインターネットサービスを提供できるという。
そして衛星ネットワークを使えば、いくつものルーターや地上のネットワークを経由せず、衛星間でシンプルに送受信するため、これまでの地上のネットワークと比べても通信速度を速めることができるという。また、僻地におけるインターネットへのアクセスが容易になる。
マスクの談話では、このプロジェクトはシアトルに本拠地を置き、60人くらいでスタートして、3~4年後にはスタッフを1,000人規模に増やしたいという。マスクはスペースXも経営しているので、都合がいいというわけだ。
元Google幹部もプロジェクトを開始
そしてもうひとり、時期をほぼ同じくして宇宙インターネットの構想を発表した実業家がいる。
元Google幹部のグレッグ・ワイラーだ。彼はすでに15年ものあいだ“インターネットに接続できない30億人”にネット接続を提供する事業を行ってきて、ルワンダにアフリカ初の3Gネットワークを提供する電話会社を設立したり、赤道近辺の地域に安価で高速なネット接続を実現する衛星ネットワークの会社を設立したりしてきた。
そしてワイラーは今回新たにOne Webという企業を立ち上げ、さらなる衛星ネットワークを構築することで、インターネットと電話通信を、まだ通信網に接続していない地域の人々に提供しようというプロジェクトを始めたのだ。
そして、そのプロジェクトをやはり民間の宇宙開発会社であるヴァージン・ギャラクティックが支援することを決定した。同様にクアルコム社もOne Webに出資するという。
実はワイラーはイーロン・マスクと協力して宇宙開発関連のプロジェクトを進めようとしていたが、結局ビジョンが合わず、別のプロジェクトを進めることになったようだ。したがって、このまま進めば両者のプロジェクトは競合する形になる。
この両者の競争の行方は読めないが、グローバルな視点で見た場合、インターネットにはまだ大幅に発展する余地があるということは確実なようだ。
通信速度が速くなるというだけなら、われわれへの影響は大きくないかもしれないが、アクセスできる人数が30億人も増えるとしたら、また世界は変わるのではないだろうか。
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