厚生労働省によると、高血圧は心臓病や脳梗塞の原因につながり、腎臓の負担も増えるという。
高血圧自体はすぐに自覚症状があるとはかぎらないが、様々な病気のリスクを増やすので治療する必要がある。現在の主要な治療法としては降圧剤が挙げられる。
器具を埋め込むことで高血圧を治療する
降圧剤を使えば必ず効き目があらわれるとは限らないようだ。しかも、その効果もすぐに出るわけではない。
しかし、薬の効き目が不十分だった患者にも効き、しかも即効性がある方法を、アメリカのROX Medicalという企業が開発した。そして、ロンドン大学クイーン・メアリーの研究で、その効果が確認されたという。
この『ROX Coupler』、ペーパークリップぐらいの器具だ。これを太もも上部の動脈と静脈の間に両者をつなげる形で埋め込む。手術は局所麻酔で十分で、小一時間でできるという。
ロンドン大学クイーン・メアリーの研究者たちは、薬による治療で効果を示さなかった83名の患者のうち44名に『ROX Coupler』を使った治療を行い、明確かつ継続的な効果を認めることができたという。
また、高血圧による合併症を改善させた患者もいた。そして、効果には即効性があった。
高血圧に対する新しい治療法で“腎デナベーション”というものもあるが、この『ROX Coupler』は、腎デナベーションで効果のなかった患者にも効き目があったという。なお、この『ROX Coupler』による治療法は、腎デナベーションとは違って完全に元に戻すこともできるし、痛みも伴わない。
従来にはない新しいアプローチ
研究チームのMelvin Lobo博士は、
「従来の薬による治療はホルモンや神経による血圧の調整に、また、腎デナベーションは腎臓の神経システムに焦点を当てたものでした。しかし、この『ROX Coupler』は、循環器系のメカニカルな側面をターゲットにしたもので、血圧を調整するまったく新しいアプローチだといえます」
という。この『ROX Coupler』による治療は、高血圧が引き起こす動脈硬化に対しても効果を示している。
ただし『ROX Coupler』にも副作用がないわけではない。この治療を受けた患者の約29%に下肢の腫脹がみられ、簡単な手術(たいていは静脈を広げるためのステント治療)を受けなければいけなかったという。
まだ研究例は十分ではなく、これからもっと長期間にわたって『ROX Coupler』の効果や人体への影響を調査する必要があると研究者は話す。しかし、十分な研究がなされたら、高血圧治療のひとつの選択肢になりそうだ。
特に薬による治療で十分な効果が出なかった患者には有効な手段になるかもしれない。
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