潜水艦や水中探査機、水中撮影用ロボットなど、水中で移動する機械は数多く登場してきたが、それらの共通点は、いずれもスクリューを回転させて動力としていることだった。
この部分でのイノベーションは起きていなかったといって良い。しかし、スクリューは水をかき回し、水底の泥を巻き上げ、水生動物たちにとっては迷惑な騒音をまき散らしてきた。
そこでもっと優雅に水中を移動する方法を採用したロボットが登場した。スクリューではなく、ヒレを使うのだ。
スクリューの諸問題をヒレが解決する
このヒレで泳ぐ水中ロボット『Sepios』を開発したのは、スイス・チューリッヒ工科大学の研究チームだ。水中での推進力にヒレを使うことで、スクリューが巻き起こしていた様々な問題を解決できるという。
水を掻き回さないし、泥を巻き上げにくい。また、音も静かで海藻に絡みつく心配もない。撮影用に使えば、泥状の水底付近や海藻の密生するなかも、クリアな視界を維持しながら撮影することも容易となる。
ただ、動画を見るとわかるとおり、『Sepios』のヒレは、魚のヒレとは若干形状や動きが異なる。これは、開発のヒントとなったのが、“コウイカ”というイカの動きだったからだ。
開発チームはこのコウイカの動きをヒントに、ロボットのヒレを開発した。まだ開発途上だが、現在の『Sepios』にはヒレが4つ付いており、全長は約70cmで、ヒレを含めた幅は約90cmになる。
このヒレを器用に動かすために、36個のモーターが制御されている。縦に回転することや垂直に移動することも可能だ。
重量は22.7kgで、水中を移動する速度は時速1.8kmと、まだゆっくりだ。これで水深10m程度まで潜行することができる。
また、バッテリーは内蔵されており、約1.5時間稼働できるが、操縦の為の情報伝達はまだ有線で行われている。これが無線になれば、より自由な活動ができるようになる。
スクリュー型からヒレ型へ移行するかも
『Sepios』がヒレを制御して、かなり器用に水中で動作する様は、かなり期待できる動きだ。
というのも、既に触れたが、現在のスクリューでは水をかき回し泥を巻き上げ、海藻が絡みつくなどの問題があり、さらにはその騒音の種類によってはイルカなどの感覚器官に悪影響を与えてしまっている。場合によっては水生動物を傷つけてしまう。
しかし『Sepios』のヒレであれば、これらの問題が一気に解決できそうだ。
近い将来、撮影用などの水中ロボットは、ヒレ型が中心になるかもしれない。
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