処世術の面からいえば、怒っているときもなるべくそれを表に出さないようにできて、嬉しいときにはストレートにそれを表現できたほうがいいんじゃないかと思う。いろいろと。
だから、スマートフォンやウェブカメラを使って、感情を読み取られてしまうなんてことになったらと思うと複雑だ。
振る舞いを観察するだけ
テキサス州オースティンで行われたアメリカ人工知能学会において、ロチェスター大学の研究者が、自撮りビデオからそのひとの感情を読み取るコンピュータープログラムの技術を発表した。
このプログラムは、ユーザーに特別な行為や、感情の表現や、何かを身につけることは要求しない。コンピューターやスマートフォンを使っているユーザーの振る舞いを観察するだけなのだ。
このプログラムを開発するために研究者たちは、脈拍やまばたきの頻度、瞳孔の大きさ、頭の動きを調査した(脈拍は、おでこのわずかな色の変化などから読み取ることができるらしい)。そして、そのときに彼らがツイートしていた内容、読んでいたものの内容、スクロールの速さ、キーを打つ速さ、そしてマウスをクリックした頻度などを分析した。
また、正確性を上げるために、研究チームは27人の登録被験者に対して、なんらかの感情を湧き起こすようなメッセージやツイートを意図的に送った。それを見たり読んだりした被験者が、ポジティブなテーマやネガティブなテーマに対して、どんな反応をするのかを調査するためだ。
さらに、被験者には自分の感情のセルフレポートをしてもらうことで、プログラムの正確さを検証し、精度を上げていった。その結果、自撮りビデオを分析するだけで、そのユーザーが“いい気分”なのか“悪い気分”なのか、“どちらでもない”のか、までは読み取れるようになったという。
研究チームのJiebo Luo教授は、もう少し進んで、たとえば“悪い気分”にしても、“悲しんでいる”のか“怒っている”のかといった区別までつけられるようにしたいという。
このプログラムはまだデモ用の試作段階で、具体的なアプリができているわけではない。しかし、研究者たちは、この機能を持ったアプリを作って、ユーザーが自分の感情の変化を自覚して、調整することができるようにしたいと考えている。
倫理上の問題もある
いっぽうJiebo Luo教授は、この手の精神状態を監視するアプリは倫理上の問題を内包していることも理解している。
アプリの適用にあたっては、自分自身が監視されることをユーザー自身が許可しなければいけないし、ユーザーが指定することなしに、データがほかのひとと共有されてはいけないと述べている。
とりあえず、このような規定を設けていれば、アプリを通じて自分の感情を他人に読み取られてしまうことはなさそうだ。
とはいえ、技術的には他人の感情をアプリで読み取ることが可能なわけだ。テレビに出ている公人の感情などは丸裸にされてしまうかもしれない。
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【参考・画像】
※ UNIVERSITY of ROCHESTER -New app would monitor mental health through “selfie” videos, social media-