歩行が困難な人の大切な移動手段である車いす。移動の負担を軽くするために、様々な技術が開発されてきた。電動で動くものはもちろん、奥歯を噛みしめる動作で前後左右に動くものも存在する。
もっとも進んだ技術としては、“脳波”で車いすを動かすというものがある。これまでは、前後左右を頭に思い浮かべると、その通りに進むものが存在した。
しかし、金沢工業大学工学部情報工学科の中沢研究室は、頭に目的地を思い浮かべるだけでその場所まで自動的に連れて行ってくれるという、かなり画期的な車いすを開発した。
数字を思い浮かべると目的地に自動的に移動
具体的には、あらかじめ施設内の地図と複数の目的地を用意し、車いすの利用者が割り当てられている数字を頭に思い浮かべる。すると脳波センサーが脳波を読み取り、車いすが周囲を読み取りながら自立走行するというものだ。
脳波の読み取りには人工知能技術『ディープラーニング(深層学習)』を適用している。通常の脳波読み取り技術に比べ、多段階での認識を繰り返すため、より正確な識別が可能。
今後は、さらに多くの人の脳波データをとってシステム精度の向上を図り、医療現場においての実証実験を行っていく予定となっている。
動画では、突然正面に現れた人間を感知して自動停止している様子が確認できる。センサーによる障害物感知があるため、ある程度の安全性は確保できているようだ。
このようなシステムが実用化されれば、車いすでの移動がとても楽なものになる。また、四肢が不自由な人でも簡単に車いすが利用できるようになり、行動範囲が広がるだろう。
脳波の認識は、実はかなり難しい技術。特に頭皮からの検出は脳波がかなり微弱になるため、正確な認識が難しい。この辺りの精度の向上がなされれば、車いす以外のものにも応用可能になるのではないだろうか。
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【参考・画像】
※ 金沢工業大学