リンゴをカットして暫く放置すると、茶色くなるのは当たり前。と思っているのはどの世代までだろうか。もしかすると、「このリンゴ変色したぞ。気持ち悪い」と言いだす世代が登場するかもしれない。
それは2月13日、米農務省が、カナダのベンチャー企業であるOkanagan Specialty Fruits社が開発した遺伝子組み換えリンゴの販売を承認したからだ。
この遺伝子組み換えリンゴ『Arctic Apples』は、切り口がいつまでも変色しない特徴を持っている。
しかし、この度の農務省の承認を受けて、遺伝子組み換え食物の安全性やラベル表示義務などについて、議論が活発化している。
切っても変色しない遺伝子組み換えリンゴが承認された
Okanagan Specialty Fruits社は、遺伝子組み換え技術を活用して、リンゴの果肉を茶色に変える酵素の発生を抑制することに成功した。
同社は2016年後半から順次、この『Arctic Apples』を市場に投入する予定で、農家の協力を取り付けつつある。
カットしても変色しないことで、外食産業やカット済みフルーツを販売している業者に有用であるとしている。
米農務省は、『Arctic Apples』を食用として販売することについて危険はないと承認した。また、他の植物や農作物にもリスクを与えないと判断している。
一方、米食品医薬品局(FDA)は、未だ『Arctic Apples』の安全性について審査中であり、食べても安全だとのお墨付きを与えてはいない。
しかし、FDAは『Arctic Apples』の安全性について審査する責任を持ってはいるものの、Okanagan Specialty Fruits社が『Arctic Apples』を販売するためにFDAの承認を得る義務はないのだ。
ただ、FDAはOkanagan Specialty Fruits社に対して、遺伝子組み換え食品であることを表示することを義務づける可能性があり、同社は既に、『Arctic Apples』に雪の結晶を模したロゴを貼り付ける意向を示している。
これまでも大豆やコーンなど、遺伝子組み換え食品は市場に出回っているのだが、『Arctic Apples』が議論を再燃させたのは、他の食品のように加工することなく、直接消費者の口に入る食品だからだ。
リンゴ農家からも、『Arctic Apples』が市場に出ることで、リンゴ自体が敬遠されるおそれがあるとして懸念の声が上がっている。
もちろん、消費者・環境保護団体は、『Arctic Apples』は人体に危険を及ぼすおそれがあると主張している。
遺伝子組み換えリンゴは日本にもやってくるだろう
『Arctic Apples』によって、米国では消費者団体が政府や議員に遺伝子組み換え食品のラベル付けを義務づけるように働きかけているが、この結果はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)を締結すれば日本にも影響が出るだろう。
既に米農務省が承認した以上、『Arctic Apples』が市場に出てくることは時間の問題だ。
皆さんは、茶色くならないリンゴを、新鮮さが保たれているようで美味しそう、と感じますか、それとも、不自然で気味が悪いと感じますか?
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