空飛ぶクルマは実現しなかったけど、僕らが昭和の時代に描いていた未来の姿は、ここ数年急速に実現しつつある。そのひとつが仮想現実だ。
先日、当サイトでもMicrosoftが発表した仮想現実デバイス『HoloLens』を紹介した。ヘッドマウントディスプレイとヘッドアップディスプレイを兼ねたようなアイテムで、ゴーグル越しに外の世界を見ることも、スクリーンに3Dの映像を投影することも可能で、現実と仮想現実を融合させることができるデバイスだ。
そして、NASAとMicrosoftがタッグを組み、その『HoloLens』を使って火星の世界をバーチャルで再現するプロジェクトが進んでいると、NASAジェット推進研究所のウェブサイトが報じている。
自分のオフィスが火星になる
NASAとMicrosoftは『OnSight』というソフトウェアを開発している。これは『HoloLens』を使って、科学者が“仮想現実上の火星表面”で作業をすることを可能にするソフトだ。これにより科学者は火星上での研究活動を計画し、実行することがより容易になる。
OnSightは、火星探査の研究者が、自分のオフィスにいながら火星を歩きまわって調査することを可能にします。これは、火星に対する認識や、火星の環境を理解するための手段を抜本的に変えるものです
と、NASA本部の火星科学研究所のDave Lavery氏はいう。
『OnSight』には、実際に火星上で活動している探査車キュリオシティが取得したデータが活用される。それをもとに、世界中の科学者が利用できる火星環境の3Dのシミュレーションを製作し、キュリオシティの活動プランを拡張していくことができるのだ。
これまでの方法では、科学者たちはコンピュータースクリーン上で火星の映像を見て、そこから推測するしかなかった。それが3Dイメージだったとしても、人間が空間の位置関係を理解するために必要な“奥行き感”には欠けるものだった。
しかし、この『OnSight』を使えば、科学者は仮想現実上ではあるが“自分の目線”で、岩石に覆われた火星表面を歩くことができ、しゃがんで様々な角度から岩肌を観察することもできる。研究者はより自然な、人間らしい方法で火星と接することができるのだ。
探査車の操作も容易に
また『OnSight』は、キュリオシティの活動計画の際にも便利だ。科学者は、対象物を見て特定のジェスチャーをすることでキュリオシティに指令を出し、その様々な装備を使えるようにするプログラムを作成できる。
この『HoloLens』用ソフトウェア『OnSight』を使ったキュリオシティの活動は、今年の後半には始まる予定だ。そしてNASAは将来的に、この『OnSight』を発展させたソフトウェアをロボットや宇宙機の操縦に役立てることを考えている。
NASAの思惑としてはそうかもしれないが、仮想現実上の火星は一般人も気になるところだ。
類似のアプリやデータが公開されれば、一般人も仮想現実で火星上を歩くことができる。もちろん火星にかぎらず、月や南極だって面白そうだ。『HoloLens』を使えば、仲間と一緒に火星でサッカーをやることも可能になるかもしれない。ヘディングはできないけど。
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【参考・画像】
※ NASA, Microsoft Collaboration Will Allow Scientists to ‘Work on Mars’ – Jet Propulsion Laboratory