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「自己修復するジェル」がピンポイントかつ持続的な薬物投与に活躍する

ジェルならば狙った場所にとどまってくれる

MITの研究チームが活用したのは、すでに十分使われている素材だ。ひとつはPEG-PLAコポリマーを使ったナノ粒子。そして、そのナノ粒子をポリマー(ここではセルロース)と混ぜてジェル状にした。

それぞれのポリマー鎖は、弱い接着力で多くのナノ粒子を結合している緩い格子状になっている。そのため力を加えると容易に離れる。したがって注射器を通して投与することが可能だ。しかし、力がかからなくなると、ポリマーとナノ粒子はまた別の相手と結合し、ジェル状に自己修復するというわけだ。

MIT-Self-Healing-Gels-01

また、PEG-PLAナノ粒子は中に核を持っていて、水と親和性の低い薬剤を運ぶのに適している。そしてポリマーは親水性の薬剤を運搬するのに適している。そのため、この新しいジェルは2種類の別の特性を持つ薬剤の投与に使えるのだ。

このタイプのジェルは、特に液体の薬剤を投与するのに適している。薬剤がすぐに体中に拡散してしまうことはなく、注射されたジェルは狙った部位にとどまり、2種類の構造によって、異なるペースで薬剤を放出することができる。そしてそのペースもまた調整可能だ。

研究者達は、このジェルはまず黄斑変性の血管新生阻害剤の投与に役立つことを期待している。現在その投与のためには月に1回のペースで目に注射をしないといけないが、このジェルを使えば数ヶ月に1回のペースに減らすことができると予想される。

そのほかにも、心臓病後の心臓細胞の修復や、外科手術後の抗がん剤の投与などに活用されるだろう。

 

現在、医療の分野においては、ナノ技術が薬剤の新しい投与方法の開発に大きく貢献しているようだ。

近い将来、副作用のあまりない強力な薬の投与が可能になったり、慢性的な病気の薬を投与する回数を減らすなどして、患者の負担を減らせそうだ。

 

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【参考・画像】

※ New nanogel for drug delivery – MIT News

※ 加齢黄斑変性 – 日本眼科学会