オリンピックという華々しいイベントの裏で“ベラルーシの陸上選手が亡命を希望”という驚くような出来事が、NHKから報道(※1)されていたのをご存知でしょうか。
日本では亡命という言葉にあまり馴染みが無いかもしれません。一体何が起きたのでしょうか? またこのニュースに対する人々の反応はどのようなものがあるのでしょうか。
ベラルーシの選手が強制送還の危機へ
8月2日のNHKニュース(※1)によると“東京の羽田空港で警察官などに対し「自分の国に帰りたくない」としてヨーロッパの別の国に亡命したいという希望を伝え、大会の組織委員会や関係機関が本人から話を聞くなどして詳しい状況を確認し、調整を進めていました。関係者によりますと、チマノウスカヤ選手はベラルーシの隣国のポーランドへの亡命を希望し、ポーランドも受け入れることを明らかにしたということです”とのこと。
チマノウスカヤ選手は詳しい理由について「もともと予定していなかった種目にほかの選手に代わって出場するよう指示され、不満をSNSに書き込んだところ『政権批判だ』として強制送還されそうになった」などと話しているようです。日本ではあまり知られていませんが「ベラルーシではルカシェンコ政権に批判的な人物への弾圧が強まっていて、欧米などからは批判が高まっています」と周辺諸国での反応も記されていました。
詳しい国の事情について「ベラルーシの大統領選挙のあと、不正を訴えて抗議活動を行う市民と治安部隊が衝突するなどして死傷者が出る事態になった」とあり、治安部隊と国民の間で緊張が高まっているようです。またルカシェンコ大統領が、“先月29日、政府内の会議で「私たちにはメダルがない。なぜ勝てないのか」と述べ、ベラルーシがその時点でメダルをとれていないと不満を表していました”と選手に圧力をかけていた様子も報じられています。
ウクライナの情勢と選手亡命への声
参議院議員(自民党)で党国防議連事務局長である佐藤正久氏は「【オリンピック 亡命希望ベラルーシ選手 ポーランドが受け入れへ 】 これまでもポーランドはベラルーシからの亡命者を積極的に受け入れている。 ルカシェンコ大統領の反発は必至だが、彼のやる事が常軌を逸しているのは、これまでの拘束者数や航空機強制着陸事案等多々ある」と投稿し、ベラルーシの情勢の危険性について声を上げています。
またポーランドが亡命を受け入れたことについて「そうか。隣国のポーランドにはそういう体制があるんですね。きっと他の人も同じように亡命したりする人がいるのだろう」と亡命できたことへの安心の声が寄せられています。
そうか。隣国のポーランドにはそういう体制があるんですね。きっと他の人も同じように亡命したりする人がいるのだろう。
— Kazuki@固ツイの活動してます (@RoomKazuki) August 2, 2021
オリンピックに参加することに対して「ミャンマー然り、命懸けでオリンピックに参加する選手もいるんだ。 本当に亡命できて、良かった。。。」という、日本ではあまり感じることの無かった危険性に考慮した意見もされていました。
ミャンマー然り、命懸けでオリンピックに参加する選手もいるんだ。
本当に亡命できて、良かった。。。— chii87 (@chii87_summer) August 2, 2021
さらにこの出来事を元に「国政の文句をSNSで言っても、逮捕もされないし、命も狙われない。世界中の全ての国がそうなって欲しいと思う」という世界平和について想いを馳せたものもありました。
国政の文句をSNSで言っても、逮捕もされないし、命も狙われない。世界中の全ての国がそうなって欲しいと思う。
— あっち向いてホイ (@Masako314159265) August 9, 2021
NHK報道局記者の足立義則氏は「いやマジか、という話。 亡命したベラルーシの選手の最初のSOSの現場にかけつけたのがNHKのディレクターで、警官に事情を説明して怪しい男たち=ベラルーシの政府関係者?を追い払い、そのあとポーランド大使館につながるまで立ち会っていたという。 すごいな、よかった。」と述べていました。
またこのような報道は亡命したチマノウスカヤ選手の安全を脅かしてしまう危険性があるとして「これって公開しちゃダメな情報では?、関係者の身の安全が損なわれるリスクあり。敢えて報道しない選択も大切では?」という心配の声もありました。
これって公開しちゃダメな情報では?、関係者の身の安全が損なわれるリスクあり。敢えて報道しない選択も大切では?
— なんぱく (@nanpaku1) August 10, 2021
ウクライナでは不安定な情勢が続いており、政府による弾圧など危険な状態です。日本ではチマノウスカヤ選手が安全に守られたことや、亡命という選択を選べたことに対して安心したという意見がとりわけ多く寄せられていました。
スポーツの政治問題が持ち込まれていることは、オリンピックで以前より問題視されてきたが、21世紀になってもこのような課題が解消されていないのは非常に残念なことです。次の2024年パリオリンピックでは、スポーツと政治の問題が一段とクローズアップされる可能性があるでしょう。
【画像・参考】
※1 オリンピック 亡命希望ベラルーシ選手 ポーランドが受け入れへ/NHK
※寄稿者 Jacob Lund/Shutterstock