接種が進むコロナワクチン。日本経済新聞によると2021年9月1日時点で国内の46.6%の人が2回の接種を完了しており(※1)、半数に迫る勢いとなっています。
緊急事態宣言が発出されているにもかかわらず人出が減らず、日本はこのワクチンに頼らざるを得ない状況になってきていますが、ニュージーランドは“コロナゼロ”を掲げ、水際対策とロックダウンを徹底することで感染拡大を抑えてきました。しかし、その戦略にも陰りが見え始めているようです。ニュージーランドでは何が起こっているのでしょうか。
限界が見えてきた「コロナゼロ」戦略
AFPBB Newsは、“ニュージーランドで新型コロナウイルスの変異株「デルタ株」の感染拡大が続いており、「感染者ゼロ」を目指す同国のウイルス根絶戦略にもはや実現性がないことを認めざるを得ない状況となっている”ことを報じています(※2)。
この状況に対して、新型コロナウイルス対応相であるクリス・ヒプキンス氏は“デルタ株の強い感染力は感染拡大の封じ込めをこれまでより難しくしていると指摘。また、ニュージーランドのウイルス根絶戦略に「大きな疑問」を生じさせているとの見解を示した”とのこと。
国内の反応は?
この報道に対し、日本国内ではさまざまな反応がみられます。
堀江貴文氏はデルタ株が出現するまで感染者数の増加を抑えられていたことがワクチン確保を遅らせ、結局今の感染拡大に繋がってしまっているとコメントしました。この意見に対し、SNS上ではさまざまな声が上がっています。
感染リスクを抑えることにある程度効果があるとされているワクチンを接種している人が少ない状態では、少しの感染者から一気に感染が拡大するリスクがあるために封鎖を徹底せざるを得ず、終わりの見えない状況に陥るとの意見もありました。
そもそも「コロナをゼロにする」という考えが愚か、という声もあります。コロナを完全に抹消させることが困難であることは、過去の政府の対応や現状からみても明らかでしょう。ウイルスの感染力が強まることを考え、封鎖と並行してワクチン接種を進めるべきだったのかもしれません。
今回のニュージーランドの戦略は「後に引き延ばしているだけ」という声もありました。コロナを抹消させるという考えではなく、コロナに感染することを前提とした対応策を政府は考えるべきという見方もあります。
評価をつけるのはまだ早いという見解もあります。実際にここまで長期的にみて感染拡大を防いできた戦略なので、失策だったかどうかは判断されるべき、との意見です。
では日本の戦略は?
今回はニュージーランドの戦略に陰りが見えてきていることが報じられましたが、一方でこれまでこの戦略は感染者数や死亡者数を抑えることに成功してきました。また、イギリスではワクチン接種率の増加から「1日5万人の感染者も許容範囲内」としてロックダウンを大幅に解除し、経済活動との両立を図ろうとしています(※3)。
ここで日本の現状を顧みると、どのような戦略・ポリシーなのかや、どこまでなら許容できるのかという基準が曖昧になってきていないでしょうか。緊急事態宣言を出し、飲食店への営業自粛を要請する一方で、人出は減らず、感染拡大も止まっていません。その中で、それをいつまで続けるのか、感染がどの程度落ち着けば経済活動を優先するといった目安を国民と共有できていません。これが、人出が減らず、ワクチン接種も思うように進まない要因となっているのではないでしょうか。ニュージーランドの“ゼロコロナ”や、イギリスの“コロナとの共生”といった方針を参考にしつつ、日本政府として、コロナとどう向き合うのかをはっきりと示すべきでしょう。
【画像・参考】
※1 チャートで見る日本の接種状況 コロナワクチン – 日本経済新聞
※2 NZでデルタ株拡大、「コロナゼロ」戦略に限界か – AFPBB News
※3 7月19日に正常化するイギリス 1日5万人の感染者も許容範囲内 「コロナとの共生」を模索 – Newsweek
※Gargonia/Shutterstock