電車内で起きた凶悪事件として、まだ記憶に新しい京王線無差別刺傷事件。容疑者が映画『ジョーカー』を意識した恰好をしていたことや、そのジョーカーに魅力を感じて犯行に及んだと述べたことで世間では大きな話題となりました。
公共の乗り物を利用した無差別事件は多くの人々に恐怖を与え、根底にある社会問題にまで浮き彫りとしたものになったと言えるかもしれません。一部の報道によると、この事件をきっかけにホアキン・フェニックス演じる、映画『ジョーカー』の地上波放送が見送られる可能性が高まっているようです。
映画「ジョーカー」、京王線無差別刺傷事件で地上波デビュー絶望的か

東スポWebの報道(※1)によると、犯行について「走行する電車内は密室状態。逃げ惑う乗客たちでパニックになりました。特徴的だったのは、服部容疑者が映画『ジョーカー』を思わせる派手なスーツを着ていたことです。警察の取り調べに対し、同容疑者はジョーカーへのあこがれを口にしています」と捜査関係者が語ったとのこと。
映画そのものについては、「ジョーカーを演じたのは名優ホアキン・フェニックス。世界中で大ヒットし、この作品でホアキンは米アカデミー賞主演男優賞を受賞したばかりか、同作は世界三大映画祭の一つ、ベネチア国際映画祭の最高賞の金獅子賞を受賞しています」と説明されています。
しかし、テレビ関係者によれば「もう地上波での放送は無理ですよ。容疑者が憧れたように、映画ではジョーカーが電車内で人を殺害するシーンがある。しかも、最近同容疑者にならうかのように電車内での凶行が相次いでおり、完全にお蔵入りになるでしょう。放送すれば『犯罪を助長するつもりか』と批判されかねませんからね」と話しているとのことです。映画祭で受賞しているような作品であるにもかかわらず放送できないのは、残念ですね。
「ジョーカー」地上波規制に対する賛否両論

今回の報道(※1)に対して、Twitterでは様々な意見が寄せられていました。
SNSでは「はー?!こんなのおかしい!作品に罪はない!罪があるのは事件を起こした人です」との声も。女性自身の記事(※2)でも、フジテレビ系の番組『ミスターサンデー』の中でジャーナリストの木村太郎氏が「電車の防衛よりもね、これジョーカーの方が問題な気がするな」と言ったのに対して、司会の宮根誠司氏が「でもそれはエンターテインメントと現実を分けてもらわないと」「エンタメ自体が成立しなくなるから」と真っ向から反論し、それに共感する声が相次いだそう。
また、“映画「ジョーカー」はもう地上波で流せないよって記事。「小田急線の事件に影響を受けた」とか「人間関係や仕事関係で上手くいかなかった」とか色々理由を犯人言ってるわけですがな。その辺まるっと無視して「放映禁止」で犯罪抑制につながるなら実にお手軽で良いですね”と皮肉めいた意見も。
一方で、「この映画に関して言えば途中CMで何度も中断しても見れるような娯楽映画じゃないから別にいいかと思う」という声も寄せられていました。
もともと視聴に関して年齢制限が設けられている作品であり、地上波での放送には賛否両論があるかもしれませんが、犯行のきっかけとなったことが理由で自粛されるというのは、ファンにとっては納得いくものではないでしょう。
放送しなければ犯罪が無くなるのか
日本よりも先に「ジョーカー」が上映されていたアメリカでは、映画館付近でロス市警が警戒態勢を示すなど、メッセージ性の強さと影響力の大きさでは問題となっていました。しかし、そのような犯罪を起こす人というのは、元々何かしらの問題を抱えていた人であり、映画はそのきっかけの一つにすぎないのではないのでしょうか。
作品を規制することで、このような犯罪が無くなると考えて終わらせるのではなく、根本的な問題への解決を目指すべきでしょう。
地上波での放送を自粛したとしても、DVDやネット配信では誰でも視聴が可能な状態である以上、規制を行ったところで犯罪の抑止力になるとは言えません。読売テレビ報道(※3)によると、犯行理由として容疑者は「仕事で失敗をした。友人関係がうまくいかなかったので死にたいと思った。6月から大量殺人をしようと思った」と語ったようです。
容疑者のジョーカーのような派手な格好ばかりがメディアで盛んに取り上げられていましたが、社会としてはこのような社会との繋がりが極めて少ないとされる人や、労働的弱者に寄り添うことなど、根本的な解決策が求められているのではないでしょうか。
※1 京王線無差別刺傷事件の思わぬ余波 映画「ジョーカー」完全お蔵入りへ – 東スポWeb
※2 宮根も唖然…木村太郎の“ジョーカー規制すべき”発言に「理解不能」とドン引き続出(女性自身) – gooニュース
※3【独自解説】京王線刺傷事件 “ジョーカー”に憧れた男の素顔とは?犯罪心理学者「計画している間も、ぞくぞくする興奮を味わっている」 – 読売テレビ
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